最近の親御さんは皆さんよく勉強されており釈迦に説法かもしれませんが、まず、小児がんはあらゆる意味で大人のがんとは違うということを覚えて下さい。
大雑把に書きますと、
① がんの種類(組織)が違う:
大人だと胃がん、大腸がん、肺がんなどが多いです。対してこどもは、神経芽腫、腎芽腫など大人ではほとんど見かけない腫瘍が大勢を占めます。
② 化学療法が効く:
化学療法、つまり抗がん剤です。大人のがんに対しても化学療法は行われますが、決定的に効果があるものは少ないのが現状です。対して小児がんでは組織形にもよりますが、素晴らしい効果を発揮する場合が多いです。
③進行した状態で見つかる:
症状が出づらい場所にできることが多く、またがん健診がないので、たいていは進行した状態(大きな腫瘍)で見つかります。
④発症する人数が少ない:
とにかく発症する人数が少ないです。大人なら、例えば胃癌を年間100人治療している病院などザラにありますが、小児がんで「この腫瘍を年間100人手術している」病院はあり得ません。神奈川県立こども医療センターの小児がん手術数は全国最多の一つだと思いますが、それでも年間40人程度です。
⑤ 救命できれば、その子はその後何十年も生きていく!:
これが僕たちの最大のやりがいです。
特殊なものを除き、原因は基本的に不明です。
よく「妊娠中の○×が良くなかったんじゃないか」などと思い悩む親御さんもいらっしゃいますが、そう考える必要はありません。
ある確率でおこること、で、たまたまお子様がそうなっただけ、とお考えください。原因が見つかればノーベル賞級です!
小児がんは頭から足まで、様々なところにできます。
組織型(顕微鏡で見た細胞の顔つき)で分類されますが、部位(臓器)の名前がついたものもあれば、つかないものもあります。
例
腎芽腫
肝芽腫(各々腎臓、肝臓にできる小児特有の腫瘍)
横紋筋肉腫(全身どこにでもできる腫瘍)
最も重要なことは、できた腫瘍の組織が何であるかです。これによって、その後の全てが決まります。
① 治療方針(手術で取ることが重要か、それとも化学療法がより重要か、放射線を当てるべきか、など)
② 予後(生存率のことです。組織が決定されることにより、同じ病気の方の生存率の集計を見て判断することができます)
③ 治療期間の見込み
小児がんはたいてい大きくなってしまってから見つかります。
これは皆さんそうです。理由は前述しました。「どうして見つけてあげられなかったんだろう」と悲嘆されるお母さんもよくいらっしゃいます。
結論から申し上げると、それは無理です。例えば胸の中にできたものは、レントゲンでも撮らない限り見つかりません。おなかの場合は、小さなこどものおなかがポコッと出てることなんて良くあります。
私の経験からは、「風邪をひいて近くのクリニックに行ったら、先生がおなかを触って分かった」と、お母さん自身が、「やっぱりなんか変」と思って近くの病院で診てもらった、ということが多いです。
健診をすればいいじゃない!という考えもあります。しかし何万人に一人という極めて少ないものを見つけるための健診は、行政側でコストとの釣り合いが取れず、現実的ではありません。以前に神経芽腫のマススクリーニング(6ヶ月でおしっこを取る)をやっていましたが、後述する事情で廃止になりました。
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